震災を乗り越えた楽器とともに―10月24日、愛知県瀬戸市で演奏します
10月24日(土)、愛知県瀬戸市の「ナトゥールビュフェー」で、少し特別なコンサートを開催していただくことになりました。
今回のコンサートは、単に音楽を楽しんでいただくだけの催しではありません。
震災の記憶、復興への思い、そして災害に備えるための知恵を、音楽と食文化を通して皆さんと分かち合いたい。
そんな願いを込めた時間にしたいと思っています。
三つの震災をつなぐ、一台の楽器
今回、僕が演奏するのは、長年愛用してきたハンマーダルシマー(Hammered Dulcimer)です。
ハンガリー語では 「ír cimbalom(イール・ツィンバロン)」と呼ばれています。
実は、この楽器には特別な歴史があります。
1995年の阪神・淡路大震災で、被災を免れた楽器なのです。
そして2011年、東日本大震災が発生しました。
僕はこのハンマーダルシマーとツィンバロンを自分の車に積み込み、2011年から2018年まで、三陸地方を中心とする被災地を何度も訪ね、復興支援の演奏活動を続けました。
被災地では、さまざまな方々と出会い、お話を伺い、一緒に笑い、ときには胸がいっぱいになるような時間を過ごしました。
音楽にできることには限りがあるかもしれません。
それでも、演奏を聴いてくださった方の表情がふっと和らいだり、懐かしい歌を一緒に口ずさんでくださったりする瞬間に、僕自身も何度となく励まされてきました。
今回、瀬戸で演奏する曲は、あの三陸の復興支援コンサートで何度も弾いてきた曲ばかりです。
僕にとっては、どの曲にも被災地で出会った方々の思い出が重なっています。
そして、この同じ楽器と曲を携えて、10月27日(火)には、能登半島地震の被災地である石川県珠洲市へ向かいます。
阪神・淡路から東日本へ。そして、東日本から能登へ。
一台の楽器とともに歩んできた年月を振り返りながら、今回も心を込めて演奏したいと思っています。
音楽とともに、災害への備えを考える
瀬戸のコンサートでは、僕が東日本大震災の復興支援活動を通じて見聞きしたことや、そこで学んだ防災への思いについてもお話しします。
災害は、いつ、どこで起こるかわかりません。
だからこそ、被災地での経験や教訓を忘れず、日々の暮らしに生かしていくことが大切なのだと思います。
今回は、そんな防災の話を、少し違った角度からも考えていただける企画になっています。
トランシルヴァニアの保存食を味わいながら
会場の「ナトゥールビュフェー」では、トランシルヴァニア地方の保存食を使った軽食とドリンクをご用意いただきます。
さらに、保存食についてのレクチャーも行われます。
食べ物を長く保存するために、人々が受け継いできた知恵。
それは単なる郷土料理の文化ではなく、災害などによって普段の生活が難しくなったときにも、私たちの暮らしを支えてくれる大切な知恵につながっています。
おいしいものをいただきながら、音楽を聴き、食文化に触れ、そして防災についても考える。
堅苦しい講演会ではなく、皆さんと一緒に語り合える温かなひとときになれば嬉しいです。
今回の企画を支えてくださるのは、長年の友人であるアッティラさんと奈美さんご夫妻です。
お二人とのご縁にも、心から感謝しています。
音楽が、誰かの明日につながることを願って
僕はこれまで、ツィンバロン奏者として国内外でさまざまな演奏活動を続けてきました。
華やかなコンサートホールで演奏することも、もちろん大切な仕事です。
でも、それと同じくらい、僕にとって大切なのは、音楽を必要としている人のところへ、自分から出かけていくことです。
三陸の被災地を巡ったときも、今回の能登への訪問も、その思いは変わりません。
一台の楽器が、どれほど人の心に寄り添えるのか。
その答えは簡単には出ませんが、これからも僕は演奏を続けていきたいと思っています。
10月24日の瀬戸でのコンサートが、音楽の楽しさとともに、震災の記憶や人と人とのつながりについて、改めて考える機会になれば幸いです。
そして、その思いを胸に、27日には珠洲市へ向かいます。
音楽と食文化を通して、過去の経験を未来への備えにつなげる。
皆さんと、そんな時間を共有できることを楽しみにしています。
10月24日(土) 愛知県瀬戸市「ナトゥールビュフェー」
ハンマーダルシマーの演奏と震災のお話、トランシルヴァニアの保存食を使った軽食・ドリンク、保存食についてのレクチャーをお楽しみいただく企画です。
後援:駐日ハンガリー大使館/リスト・ハンガリー文化センター