図書室から世界へ―子どもたちに届けたい「音と言葉」
来週、市内の小学校で
「震災の記憶と希望を、音と言葉で届けるコンサート」をします。
イール・ツィンバロン(ハンマーダルシマー)の演奏だけではなく、これまで僕自身が経験してきた震災のこと、被災地で出会った人たちのこと、そして音楽を通して感じてきたことを、子どもたちに話す予定です。
今回のコンサートのことを考えながら、ふと自分が小学生だった頃を思い出しました。
僕は子どもの頃から、外国の文化や音楽にとても興味がありました。
でも、もちろんインターネットなんてありません。
知らない国のことを知りたい。
外国にはどんな音楽があるんだろう。
どんな人たちが暮らしているんだろう。
そんな疑問を持ったとき、僕にとって一番身近な「世界への入口」は、学校の図書室でした。
僕は図書室が大好きでした。
本棚の間を歩きながら、知らない国の名前を見つけたり、写真を眺めたり、地図を開いたり。
一冊の本から、まだ行ったことのない遠い国を想像していました。
今思えば、ずいぶん時間のかかる「検索」だったのかもしれません(笑)。
今の子どもたちは、世界とつながっている
今は、知りたいことがあればインターネットで検索できます。
外国の街並みも、音楽も、言葉も、映像も、ほんの数秒で見ることができます。
僕が小学生だった頃には想像もできなかった環境です。
だから来週、子どもたちの前で昔の話をしたら、
「そんな時代があったの?」
と、昔々のお話のように聞こえるのかもしれません(笑)。
でも、便利な時代になった今だからこそ、僕が直接伝えられることもあるのではないかと思っています。
インターネットで「震災」と検索すれば、たくさんの情報が出てきます。
「ハンガリー」と検索すれば、美しい街や文化について、いくらでも知ることができます。
「ツィンバロン」と検索すれば、演奏動画だってすぐに見ることができます。
でも…
目の前で鳴った楽器の音を身体で感じること。
実際に経験した人から、その人自身の言葉で話を聞くこと。
これは、検索結果とは少し違うものだと思っています。
音と言葉で届けたいもの
僕自身、音楽を通していろいろな国へ行き、たくさんの人と出会ってきました。
そして震災のあとには、被災地でも演奏してきました。
そこで教えてもらったことは、音楽そのものだけではありません。
人と人が出会うこと。
誰かを思うこと。
困難なときにも希望を持つこと。
そうしたことも、音楽と一緒に子どもたちへ届けられたらと思っています。
小学生だった僕が、図書室の本を開きながら想像していた遠い世界。
その後、本当に外国へ渡り、音楽を学び、演奏家になりました。
だから今度は僕が、子どもたちに小さな「世界への入口」を渡す番なのかもしれません。
来週、イール・ツィンバロンの音と僕自身の言葉で、
「震災の記憶と希望」
を届けてきます。
子どもたちの心に、何か一つでも残ってくれたら嬉しいです。