昨日は僕の誕生日でした。世界中の友達が誕生日のお祝いメッセージを送ってくれて、とても嬉しかったです。ありがとう。
2026年6月、僕はハンガリー国立リスト音楽院でディプロマを取得してから、ちょうど20周年を迎えました。そして誕生日も迎えた今、これまでを振り返り、これからを見つめながら、どうしても皆さんに伝えておきたいことがあります。
【むき出しのピアノ?魂の響き】
「ツィンバロン」という楽器。初めて聞く方もいるでしょう。
台形の木箱に金属弦。綿を巻いたバチで叩く、エキゾチックな楽器です。
「ピアノのご先祖さま」とも呼ばれ、リストは“マジャール・ゾンゴラ=ハンガリーのピアノ”と呼びました。
大河ドラマべらぼうの中でも「蔦重のひらめきの音」として使われ、少しずつ知られてきました。風のように繊細で、胸を締め付けるほど哀愁に満ちた響き。一度聴いたら忘れられない音です。
【楽譜の向こう側にあるもの】
20代、僕は本当の姿を知りたくてハンガリーへ渡りました。
そこで知ったのは、「バチを器用に動かす」だけでは語れない、深い音楽の海でした。
ツィンバロンには、ハンガリーの歴史、人々の喜びと悲しみ、言葉のイントネーション、そしてロマの音楽家たちが百年かけて磨いた「即興の魂」が息づいています。そして僕は、リスト音楽院では“芸術楽器”として、ソロもアンサンブルもオーケストラとの新作も演奏しました。
楽譜をなぞるだけでは、その魂は眠ったまま。
指揮者の呼吸を感じ、オーケストラと対話し、その瞬間の揺らぎを音に乗せる。
それがコダーイたちが込めた、本物の真髄なのです。
【ネットの情報を「そのまま信じないで」ほしい】
今は誰でも情報に触れられます。Wikipediaもその一つです。
しかし、悲しいことに、そこがいつも“正しい真実”とは限りません。
ツィンバロンの解説でさえ、専門書から都合の良い部分だけを抜き出したり、資格を持たない奏者がプロと同列に並んでいたりします。
僕は公式に「Cimbalom」の日本語表記に関しても指摘を重ねてきましたが、返答はありません。
だからお願いします。
本物の文化は、匿名の文章ではなく、歴史と実績の中にあります。
ネットの文字を、そのまま盲信しないでください。
【未来へ、灯を繋ぐために】
日本で演奏し始めて20年。僕は本物の響きだけを届けると決めてきました。
ツィンバロンの専門家となって20年たった今、プロの音楽界もハンガリー政府も背中を押してくれます。
だからこそ、これから目指す若い世代のために「本物の系譜」の道標を作りたい。
僕が現役で全力で走れる時間は、あと数年かもしれません。
だから今、真実の美しさを伝えたいのです。
ほんの少し、耳を澄ませてみませんか?
もしツィンバロンに出会う機会があったら、表面の情報ではなく、その奥の「歴史の重み」と「奏者の魂」に触れてください。
ハンガリーの大地から日本のステージへ繋がってきた響きに、本当の感動があります。
この美しい文化を一緒に守り、愛してくれる皆さんと出会えることを、心から楽しみにしています。
2026年6月 斉藤浩


