タカーチ マエストロ@ハーリヤーノシュの凄かったところ

リハーサル初日、3楽章冒頭のビオラソロの前に、全員の前でこの旋律『Tiszán innen, Dunán túl』を歌って聴かせて下さった。それを受けて安達真理さんが見事なソロを弾かれた。

「ちょっとバイオリン貸して」と団員のバイオリンで、ハンガリーのnépzeneいわゆる「民俗音楽楽団のバイオリンやビオラの弓の使い方(弓元で引っ掛けて弾く)」を弾いて見せて下さった。

自らの手をバチバチ膝に打ちつけ音を鳴らし、ハンガリーの男性舞踊の激しさを見せて下さった。

全6曲で成り立つハーリヤーノシュ組曲であるが、なんといっても凄かったのは曲間であった。指揮も動かない、団員も譜めくりもせずじっとしたまま。そのなんとも言えない曲間にも、実はタカーチマエストロの作るハーリヤーノシュには音がなっていて、ドラマが展開しているようであった。

一番(僕的に)面白かったのは、ゲネの時、4楽章から5楽章へはatacca(切れ目なく)で演奏するのだが、ここでタカーチ マエストロのハンガリー人としての血が燃えさかるのでありました。4楽章はハーリヤーノシュが率いる軍がナポレオン軍を打ち負かし、ナポレオンは泣きながら後退、そして消えていく(ここで使われるのがサキソフォンでナポレオン軍の象徴)。そして切れ目なく5楽章のヴェルブンク(ハンガリーの兵隊の踊り)がかなり興奮した状態で始まるのです(そこで使われるのがツィンバロン。ハンガリーを象徴する楽器なのです。とにかく強く堂々とカッコよく勇ましく弾かねばならないのです)。
『Hiroshi, gyere gyere!!! Gyere Hiroshi!! (ヒロシ、来い、もっと来い‼︎ もっと情熱を爆発させろ‼︎ の意)』と指揮をしながら僕に叫んでおられました。
これは、テンポや音量がどうとかいうことではないんです。ナポレオンを一撃で打ち負かした、ハンガリー軍の(ハンガリー人としての)『プライド=誇り』なんですよ。僕にはそれがとても印象的で感激したんです。

組曲ハーリヤーノシュで、ツィンバロンは『ハンガリーの象徴』であり、3楽章『歌』でも、譜面通りに弾いてはダメなんです。そこには絶対『自由』がないと…。マエストロは「指揮が合わせるから、ツィンバロンはもっと自由に‼︎」と。縦割りのリズムではないのです。(ま、ツィンバロンの譜面は何十連符だったりするので、これはコダーイが意図してこう書いたのだと思う)

リハーサルから本番まで、マエストロがたくさんたくさんのことを伝えてくれ、僕の音楽人生の中で、貴重かつ忘れることのできない1ページとなったことに間違いない。

2025年06月01日