クルタークの音のイメージ
クルターク「シュテファンの墓」では、クルターク自身がインドネシアの青銅打楽器オーケストラ「ガムラン」から影響を受けたといわれている楽器群(ハープ、チェレスタ、ヴィブラフォン、スピネット、チューブラベル、ハルモニウム、ピアニーノ、そしてツィンバロン)があって、曲の中間部でこの楽器群全員が同じリズムで幻想的、かつまさにガムラン風の響きを出す8小節がある。
しかもこの楽器群全員がPPP。テンポも超スロー。全く寸分の狂いもなく同じタイミングで合わせるのはかなりドキドキ緊張する。そんな中で、ツィンバロンはこの8小節間、ダンパーペダルを踏みっぱなしなのです。何が起こるかというと、周りの楽器(ガムラン風楽器群のチェレスタやチューブラベルやヴィブラフォン)の出す音、その音程に『共鳴』して、僕自身が叩いているわけではないツィンバロンの弦までが鳴り出すのです。
ダンパーペダル踏みっぱなしでよくある現象なのだけれど、周りの楽器にツィンバロンの弦が大きく影響し、叩いてない弦までが共鳴し、鳴り出すのです。たぶん、ツィンバロンの前に座っている僕には特にその共鳴した音が耳に入ってくるのだと思うけど…。
だからね、この曲「シュテファンの墓」のツィンバロンパートというのは、メロディを奏でるというよりも、メロディ音に対し共鳴するツィンバロンの弦の音を響かせ、ガムラン楽器群に独特の共鳴音、残響音を足すための(インドのシタールの共鳴弦のような)役割も担っているのではないか…そんな風に感じています。